お正月。


多くの日本人にとって最も楽しみな行事であり、数ある日本の伝統行事の中で最も大切なもの。


家族揃って、重箱の中に彩られたおせち料理を食べる。


食後には羽子板、羽根突き、駒回し、凧揚げなどの伝統的な遊びで汗を流し、体が疲れてきた頃合に、お母さん手作りのおしるこを食べる。


友達からの年賀状に頬は緩み、お年玉という子供にとっての最高の楽しみの使い道を考え、また、頬を緩ませる。


そんな家族団欒の象徴でもある、お正月。








色々と御託を並べてみたものの、このご時世お正月に外で元気に凧揚げをする子供達の声はあまり聞こえず、家族団欒というよりも、親戚の家を回り過ごすのが近年のお正月なのかもしれない。
かく言うあたしも、両親はゴタゴタがあって帰国しないらしく、年末年始もいつもと変わらず1人ぼっち。
まぁ1人のほうが気楽で色々と良かったりするんだけれども。
折角だから、仲の良い友達でもよんでパーッと年越しでもしようかと思ったけど、まだ中学生だし、新年は家族と迎えたほうが良いはず。

というわけで、あたしの年末年始は、こたつに首まで潜り込み、やたらとかまびすしいテレビの特番を見たり、面白そうなDVDを借りてきたり、漫画の一気読みをしてみたり、世間一般で言う寝正月を送ろうと決め込みました。
だから大掃除も早めに済ませたし、年賀状も出したし、食料買いだめしたりした。
挙句の果てに前々から気になってた漫画を買ったり、DVD借りてきたり、テレビ雑誌を買ったりして、いつになくあたしは抜かりなかったわけですよ。
ええ、どこつついてもボロが出ないほど完璧な計画です。幸せいっぱいの年末年始を送れるはずでした。













1月1日 午前6時30分。




何でこんなことになってるんでしょうか。





















ノンパピリア

















・・・思いおこすこと1日前。



部活も無事に12月30日で終わり(それでも充分遅いと思う)ようやくやってきました12月31日。あたしの幸福な年越しが始まりました。
予定通りこたつに篭ってだらだらと1日を過ごしましたよ?
誰にも邪魔されずに自分のやりたいことだけをやって1日過ごすって本当にいいよなーと、腑抜けた面をテレビに存分に晒しながら、お笑い番組を見てゲラゲラ笑っていたあたしの携帯が聞きなれた着信音と共に鳴り出した。
これはこの前電話に設定した、電話の着信音。
あたりの嫌がらせ電話かなーと思いつつ、携帯のディスプレイをよく見ずに電話に出るあたし。


「もしもしー。」

「1月1日。午前6時から部活。」

「・・・は?え、ちょ、跡部!?」

「聞こえなかったのか?ったくどこまでも手間かける奴だなお前。」

「跡部!?何で!?何で跡部!?」

「これ以上は言わねーからな。1月1日午前6時から部活。遅刻したりサボったりしたら串刺しだからな。」

「はぁ!?ちょ、聞いてないんだkブツッ。







あと3時間ほどで今年も終わりだっていうのに。


、15歳。


天上の楽園から一気に奈落の底へ叩き落とされました。




















































「っあ゛ー!!激寒ぃぜ!!!」

「くそくそ跡部め!!何で正月の、しかも6時から部活なんだよ!!」

「だから何度も説明してんだろーが!!お前らが正月で気抜けてるから気持ちを引き締めるためだ。」

「納得いかんわ!!絶対何かあったやろ跡部!!」

「いい加減本当のこと言ってください。」

「しつこいんだよ!!」

「正月くらいはゆっくりしたかったですね・・・。」

「いいからさっさとテニスコート行け!!何のためにくそ寒いなか来たと思ってんだよ。」

「来なかったら串刺しとかリアルなこと言うからじゃねーかよ!!」

「おい、!!いつまでも隅でブツブツ言ってんじゃねーよ!!ジローもいい加減起きろ!!」

「んー・・・眠い・・・。」

「起きろや!!俺かて眠いんや!!」

「ジロー先輩が時間通りに来たときは驚いたんですけどね。」


長太郎が、毛布にくるまって目を擦っているジローを見て苦笑する。


「あー、納得いかねぇぜ!!」

「何がー?」

「さっきから散々言ってんだろーが!!」

「俺聞いてなかったC。」

「だから、何で正月に部活があるのかって話だよ!!何度も言わせんなよな。」

「あ、それなら俺知ってる。」

「気合いいれるためって言ったら怒るからな俺。」

「違うよー。そんなの初耳だもん。」

「じゃあ何だよ?」


明らかにジローの言葉を信じていない宍戸が、適当にジローに聞き返す。


「昨日俺もいたもん。」

「俺もいた?わけ分かんねーよ。」

「昨日ねー跡部んちに遊びにいったら、丸井君から電話かかってきたの。んで、明日は部活あるのか?って聞かれたから無いって答えたら、後ろで真田のたるんどるって声が聞こえてきて、それを跡部に言ったら跡部が俺の携帯奪って、丸井君に真田に変われって言って、真田に俺達は6時から部活だとか何とか怒鳴ってたから今日急に部活になったの。」

「それ本当なのジロちゃん!?」

「あれ?いたの?」

「それ本当なのって聞いてんの!!説明が下手なのはいつものことだから気にしないよ!!」

「本当だよー。ねぇ跡部?」

「余計なこと言うんじゃねーよジロー!!」

「お前のせいかよ跡部!!」

「何で跡部に振り回されなあかんねん!!」

「何でくだらねぇお前の意地に俺達を巻き込むんだよ!!」

「跡部さん・・・。」

「信じられない跡部!!元旦から信じられない!!お前今年超不幸になれ!!」

「うるせーんだよお前ら!!!さっさとテニスコート行け!!!」

「はぁ!?逆ギレ!?謝罪の言葉もなく逆ギレ!?」

「うるせーっつってんだろ!!大体お前さっきまで呪い受けたみたいに隅でいじけてたのに、何で急に元気になってんだよ!!」

「今はそんなこと関係ないでしょ!?」

「跡部。今日はお前が悪いで。」

「ほーら!!みんなあたしの味方だよ!?」

「勘違いすんなよ!!別にお前の味方したわけじゃねーかんな!!」

「何?初裏切り?」

「裏切りも何も俺らはお前の味方なんかしてねーよ。」

「初言い訳かお前ら!!」

「てめぇさっきから初初うるせーんだよ。何でも初ってつけたら良いと思うなよ!?」

「あたしの15回の経験の中で圧倒的に1番嫌な年越しだったんだからね!?」

「今はそんなこと聞いてねーだろ!?お前は年中人の話を聞かないんだな!!」

「あたしの早すぎる頭の回転に跡部がついてこれてないだけじゃないの?」

「お前ら話ズレてんぞ。」

「とにかく俺らの幸せな正月を返せ!!」

「お前らがろくでもない正月送ることを防いでやったんだよ!!むしろ俺に感謝しろ。」

「感謝!?感謝言うたか自分!?」

「先輩達!!!」

「何やねん日吉!!例え後輩やろうと、跡部の味方するいうんなら容赦せぇへんで。」

「何でテニスをしようとしないんですか!?ここで不毛な言い争いをして無駄な時間を過ごすなら、さっさと練習メニューこなして帰ったら良いでしょう!?」

「日吉。お前間違ってるわ。」


ゆっくりと、忍足が口を開く。


「何がですか。」

「俺らはな、家に帰りたいんやない。テニスをするのが嫌なわけでもない。」

「・・・じゃあ何ですか。」

「跡部の傲慢さに怒っとるんや・・・!!」


一同代表忍足侑士、と言わんばかりに日吉に自分達の気持ちを説明する忍足。
そしてそれに頷くあたし、宍戸、岳人。
代表者が忍足っていうのは納得いかないけど、あたし達の気持ちを見事簡潔に説明してくれたので、認めてやろうと思う。

うん、一言で言うとそうなんだよ。
全てあいつの傲慢さが悪いんだよ!!


「あんたら馬鹿でしょう!!」


日吉が盛大に顔を引き攣らせ、そう叫ぶ。


「先輩に馬鹿とは何だよ!!」

「馬鹿としか形容出来ないからでしょう!?」

「てめぇら・・・これ以上茶番見せるっていうんならこっちだって考えがあんだよ。」


・・・跡部さん拳を握りしめております。
まずい。非常にまずい。

よく分かんないけどあたしが真っ先に殴られる気がする。

根拠はないけど、自信はあるよ!!

自分で言ってて悲しすぎる。
でも元旦から痛みを感じるのはちょっとなぁ・・・。
ちょっとっていうかもの凄く嫌だ。


「あ、あたしドリンク作ろーっと。」

「あっ、汚ねーぞ!!」

「だって真っ先にあたしが殴られるに決まってるもん!!いつもなら立ち向かうけど、お正月から跡部とやり合って、自ら不幸になったりしないよ!!」

「やり合うのが不幸だって意識はあったんだな。」

「というわけでとばっちり喰らうのが嫌だから早くテニスコート行って。」

「お前に命令されると癪に触る。」

「うっさいわねー!!テニスコートに行ってくださいませ。これでいいの!?」

「お前本当馬鹿だろ!!」


岳人はゲラゲラ笑いながらも、ソファーから飛び下りた。
他のみんなも相変わらず阿呆面をひっさげて、渋々と部室を後にする。
未だに跡部は拳を固く握りしめたままです。
おー怖い。
正月からこんなんじゃ、今年の跡部の不幸は約束されたようなものですよ!!

多分今日中に3回くらいこける。
部活中だったら嘲笑ってやろう、うん。


「お前今何かむかつくこと考えてんだろ。」

「部員がテニスコートに向かってるのに自分は行かないんですか跡部部長?」

「・・・チッ。」

































まぁ元旦だからといって練習メニューが普段と変わるはずもなく。
あたしもいつも通りドリンク渡したり、ボール拾い手伝ったり、まぁそんな感じです。

しいていつもと違うところをあげるなら岳人が「初跳びっ!!!」とか言って盛大に跳んで跡部に蹴られたくらいですかね。

跡部も本当心狭いよなぁ。
やっぱ新年って、何でも『初』ってつけたくなると思うんだ。
大晦日には何でも『ラスト』ってつけたくなるのと同じ原理ですね!!
元気に1月1日を迎えることなんて、数えるほどしかないんだから、大目に見てやればいいのに。

・・・まぁ心が広い跡部っていうのもちょっと違うな。
それはそれで悲しくなってくるかもしれない。


と、頭の中で何度創ったであろう『良い跡部像』を描きつつ、ボールを拾ってたらカゴをひっくり返して跡部に睨まれました。
ちくしょう。








































「終わった終わったー。」

「なんか新鮮な気持ちですよね。」

「そうかー?」

「でもさー、少しはお正月っぽいことしたいよね。」

「おせち料理食うとか?」

「跡部んちのおせち料理って想像できないほど豪華そうだよな。」

「あ、じゃあみんなd「俺様の家に行こうとか言ったら殴る。」

「・・・ケチ。」

「ケチじゃねーよ!!お前ら上限とか知らねーから恐ぇんだよ!!」

「岳人この前シャンデリア触ろうとしてたからな。」

「あとちょっとで届いたんだけどな!!」

「だからそういう後先考えない行動するから呼びたくないって言ってんだよ!!」

「まぁ跡部んちに迷惑かけるわけにはいかんからなぁ。」

「お正月なのにメイドさんの仕事増やすのも可哀想だもんね!!」

「そこか!?」

「そこだよね!?」

「俺の顔を見るな。」

「前々から聞こうと思ってたんだけどさ、跡部ってメイドさんと個人的な語らいとかするの?」

「だから何でそうお前は流れを読まないんだよ!!」

「あ、はぐらかした!!聞かれたくないことだからって誤魔化した!!」

「ねーねー、初詣行こうよ!!」

「初詣?行こうぜ、面白そうじゃん!!」

「ジローにしてはいい考えじゃねーか。」

「そうやな。折角正月にこうして集まったんやから、初詣くらい行っとかんと。」

「どこ行きますか?」

「ここらに手ごろな神社あったっけ?」

「日吉も行くだろ?」

「初詣も悪くないですね。」

「ちょ、あんたらあたしに協力する気ないの!?今核心に迫ろうとしてたんだよ!?」

「空気読め。」

「読んでますー!!跡部には言われたくないってこれ言うの何回目!?」

「知らねーよ。」

「やっぱあそこじゃね!?ここらじゃ微妙に有名だしさ。」

「そうだな。じゃあ早速行くか。」

「あ、昼飯どうする?」

「お前らあたしを無視して話を進めるなー!!!」

「あーはいはい。お前も初詣行くんやろ?」

「・・・行く。」

「ったく素直じゃねーなお前。」

「でもよ、元旦だからやっぱ混んでるんじゃねーの?」

「元旦に空いてる神社なんてご利益なさそうじゃん。」

「でも混んでたら、それだけ参拝者が多いってことだからウチらの願い事を叶えてくれる確立も低くなるんじゃないの?」

「馬鹿!!人がたくさん来る神社の神様はそれだけ力が強いんだよ!!」

「そうなんですか?」

「そうだよ。・・・多分。」

「そんな自信満々にデタラメ言うなや岳人。」

「何迷ってんだよ。人がたくさんいるところの方がいいに決まってんじゃねーか。駅前のあそこ行くぞ。」

「何で跡部が仕切る・・・まぁいいか。」

「よし、じゃあ場所はあそこで決定だな。」

「ねー、お昼は?お昼は何処で食べるの?俺お腹空いたC!!」

「お前は食欲と睡眠欲しかないのか。」

「俺マックの新商品食べたい。」

「マック?そんな低俗なもん俺様に食わせる気か?」

「ちょ、跡部!!マック馬鹿にすると庶民代表宍戸に怒られるよ!?」

「うっせーよ!!」

「あー、ほんまお前らとまともな話し合いって出来ひんな!!」

「忍足さんそんなの期待してたんですか?」

「淡い幻想やったわ。」

「何喋ってんだよ忍足と日吉!!お前らもお昼どこで食べるか真剣に考えろよな!!」

「何で新年早々そんなくだらないこと考えなきゃいけないんですか。」

「もうどこだっていいじゃんかよ。何でそんなこだわってんだよお前ら。」

「えー、やっぱ美味しいもの食べたいじゃん!!ねー?」

「美味しいものは食べたいけど、何かもう面倒っていうか・・・。」

「あー、が俺を裏切った!!」

「ジロー、お前少し黙ってろ。」

「跡部までそうやって俺をノケモノにするんだ!!」

「何でお前はそんなテンションあがってんだよ!!わけ分かんねーよ!!」

「あ。」

「何やねん岳人。」

「俺知ってる、おせち料理食べられる店!!」


勝ち誇ったような笑みを浮かべて、そう宣言する岳人。
何でそんな嬉しそうなのかよく分かりません。


「いつものファミレスに、元旦はおせち料理やってますって張り紙あったぜ!!」

「あそこかー・・・。」

「正月からファミレスか?」

「いいんじゃないですか。あそこはよくみんなで行ってますし。」

「そうだなー他に手ごろな店知らねーし、あそこでいいか!!」

「まさか正月まであそこ行くとはなぁ・・・。」

「いいんじゃん?何かあたし達っぽいよ。」

「あたし達って何でお前とその他みたいになってんだよ!!」

「はぁ!?ちょっと跡部なんでそこにつっかかるの!?」

「その言い方気にいらねー。言い直せ。」

「あたし達はあたし達じゃん!!文句言われる筋合いないわよ!!」

「いいから言い直せっていってんだろ!!」

「何でそんな怒るの!?」

「俺様のテニス部をお前のものみたいに言ったのが気にくわないんだよ!!」

「お前のテニス部じゃねー!!!」

「うっせーよ、叫ぶなよ!!」

「痴話喧嘩もそのくらいにしておいてください。置いていきますよ。」


誰が痴話喧嘩だって!?と問い詰めようとしたら、さっきまでの位置にみんなはいなくて。
気付けば部室の中には一触即発状態のあたしと跡部が2人きり。
他の奴らはドアの傍でせせら笑いながらこっちを見ていて非常にカチンときます。

新しい年の始まりだっていうのに、悲しいくらいいつもと代わり映えないですね!!



所詮新年だろうが何だろうが、騒がしさならどこにも負けない氷帝学園男子テニス部は、健在なようです。













新年明けましておめでとうございますー!!
奇跡がおこりました。1月1日に何とかUPできましたよ!!
あたしも書くものも相変わらずですが、今年も宜しくしてやってください☆

ちなみに1月いっぱいフリーとなっております(爆)
サイトなどに転載してもかまいませんが、その際は必ず小町娘の表記をお願いします。
配布終了しました。お持ち帰りくださった方本当にありがとうございました!!