「なぁー?」
「んー?」
「俺ケーキ食いたい。」
ショコラッタ
「良かったね。帰りに買ってけば?」
「違う!!俺はそういうこと言ってんじゃねーの!!」
「逆ギレ!?さっきケーキ食べたいって言ったじゃん!!」
「俺はお前が作ったケーキを食いたいんだよ!!」
「何であたしがブン太のためにケーキ作んなきゃいけないのよ。」
「俺達付き合ってるんだよな?」
「うん。」
「彼女って彼氏の好物作って部活終わるの待つもんだろ!?」
「だから部活終わるの待ってるじゃん。」
「違うって!!1番大事なのは『好物を作って』ってとこだろ!? 俺の好物は?」
「チロルチョコ。」
はい。とポケットからチロルチョコを1個取り出してブン太の掌に置くも、ブン太はそれすら振り払う。
・・・失礼な奴め。
「お前は俺の何を見てんだよ!!」
「チロルチョコいらないの?」
「そういうことじゃないだろぃ!?」
そう言いながらもブン太はチロルチョコをズボンのポケットにしまう。
「結局貰うんじゃん。やっぱ好きなんじゃんチロルチョコ。」
「誰もチロルチョコが嫌いだなんて言ってねーだろ!!」
「じゃあチロルチョコ好き?」
「おう。」
「良かったね。好物じゃん。」
「ちがーう!!!」
「違くないじゃん!!チロルチョコ好きなんでしょ?好物なんでしょ?彼女から好物貰いたいんでしょ?どこも間違ってないじゃん!!」
「どこが違うっつーか根本的に違うんだよ!!」
「何で怒んのよ!!何が違うのか理解出来ない。ちゃんと説明して!!」
「だから・・・よ。ほら、俺の好物を作ってって言っただろ!!チロルチョコはが作ったものじゃない!!」
「じゃあ何?あたしにチロルチョコを作る職業に就けと?彼氏だからってあたしの未来まで束縛する権利はないと思う。」
「だから何でお前は話を間違った方向にどんどん発展させてくんだよ!!」
「ブン太がはっきり言わないからでしょ!?」
「俺一番最初に言っただろ!?の作ったケーキが食べたいって!!」
「うん。だから嫌。」
「何でだよ!?お前俺のこと好きじゃないのかよ!!」
「好きだよ!?だからこうして屋上でお昼ご飯一緒に食べよう?って誘ったんだもん。」
「じゃあケーキ作るくらいいいだろぃ!!」
「何であたしにケーキ作ってほしいの!?」
「好きな奴の手作りケーキ食べたくない男いるか!!」
「あたしにそんなの望まないでよ!!」
「じゃあ聞くけどよ、は何でそんなにケーキ作んの拒否すんだよ!?俺のためには作りたくないってことか!?」
「あたしが作ったケーキより買ったケーキのほうが絶対美味しいもん。」
「そんなの分かんないだろぃ!?」
「このままじゃ埒あかないね。分かったよブン太。」
「・・・。」
「あたしがあたしのおこずかいでブン太にケーキ買ってくる。」
「何も分かってねーだろ!!!」
「煩いよ!!耳元で叫ばないでよ!!」
「前から思ってたけどよ、お前人の話聞いてないだろ!?」
「ちょ、失礼なこと言わないでよ!!あたし話とか超聞くよ!?」
「現に今話聞いてないくせに!!」
「わざと聞いてないフリして強引に他の話にすりかえようとしてるんでしょ!?空気読みなさいよ!!」
「そんなことしようとしてたのかよ!!」
「・・・。」
「お前本当勢いだけで生きてるな。」
「・・・っ!!もういい!!あたし行くから!!」
「おい、ちょ、!!」
引き止めるブン太の声を無視し、あたしはお弁当の包みを持って屋上を後にした。
本当何なんだろうかあの男。
そりゃあたしも勢いで思ってたことバラしちゃった時は「頭悪っ!!」とか思いましたよ?
でもそれを人から指摘されるとカチンとするのが人間じゃないですか。
ていうかまた勢いで屋上から出てきちゃったしね!!
あたし何でこんなに勢いだけで生きてるんだろうと我ながら嫌になる。
ムカムカする気持ちを抑えようともせず、あたしは階段を豪快に音を立てておりていく。
今なら耳をすませばの超名シーン「やな奴やな奴やな奴・・・」と雫が呪詛を吐くシーンを再現できそうです。
冷蔵庫と麦茶さえあれば「コンクリートロードはやめたほうがいいよ」と聖司くんのモノマネをしてる雫のモノマネとかちょっとややこしいこともできますよ。
こんな風にブツブツ何かを唱えながら階段をおりていくあたしの姿は、友達によると相当危ない女だったそうです(後日談)
「あれ?どうしたの?」
「ブツブツブツ・・・。」
「ちょ、!!」
「・・・あ、。」
「何ブツブツ言ってんのよ。ていうか丸井君は?」
「丸井?誰それ?あたし雫。天沢聖司君の彼女なの。」
「はぁ?」
「はぁ?じゃないわよ。何間抜けな声出してんの?」
「間抜けはあんたでしょ。丸井君はどうしたのって聞いてんの!!」
「・・・だからあたしの彼s「いい加減にしないと怒るよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・喧嘩しました。」
「喧嘩?何で?」
「・・・ブン太があたしの作ったケーキ食べたいって。」
「断れ。」
「断ったわよ!!つーかどういう意味!?」
「あんたの料理が食べたいなんて命知らずな奴がいるなんて思わなかったわ。」
「本当のことだけど何かムカつく。」
「だってあんたポイズンクッキングだもんねー・・・。」
「誰が千紫毒万紅の使い手よ。」
「似たようなもんじゃない。」
「どこが!?」
「まぁいいわ。断ったから喧嘩になったってこと?」
「うん・・・。」
「前もお菓子作り頼まれてなかった?」
「断ったけどね。」
「丸井君も諦め悪いなぁ。何でわざわざ地獄に堕ちたいんだろ。」
「あたしが料理ちょっと苦手だってこと知らないんだと思う。」
「何婉曲表現使ってんのよ。ちょっとじゃないでしょ。でもさ、前は喧嘩になってなかったじゃん。」
「・・・俺のこと好きじゃないのか?とか、彼女の手作りケーキを食べたいっていうのは男として当然だ、とか言われた。」
「それでどうしたの?」
「チロルチョコあげて、お前は勢いだけで生きてるとか暴言はかれたから屋上から出てきた。」
「結局勢いだけじゃない。」
「うっさい。」
「痴話喧嘩ならいつものことだけど、今回はそうじゃないみたいね。」
「・・・。」
「仲直りしたんじゃないの?」
「・・・。」
「したくないの?」
「・・・分かってるくせに。」
「分かってるつもりだけど、の口からその言葉を聞かなきゃそれは推測でしかないもん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・したい。」
「なら頑張らないと。」
「・・・うん。」
「何悩んでるの?」
「え・・・?」
「さっきから涙ぐんでるのあたしが気付いてないとでも思った?」
「・・・泣いてなんかないもん。」
「強がらなくていいって。話してみ?」
「・・・。」
の言葉を聞いて、我慢していたあたしの目から、ドバッと勢いよく流れ出る涙。
「不安なのー!!ブン太がっ・・・ブン太があたしのこと嫌いになっちゃうんじゃないかってー!!」
嗚咽まじりに声を荒げるあたし。
もう感情の制御が利かなくなっているあたしを、はそっと抱きしめてくれた。
「の好きな丸井君ってそういう人?」
「ちがっ・・・でも、食べ物本当に好きだし・・・!!」
「が食べ物に負けるわけないじゃん。」
「本当に?」
「うん。」
「だってブン太のおやつ食べたらマジギレされたよ?」
「・・・大丈夫だって。」
「お菓子も作れない彼女なんていらないって言われない?」
「練習すればいいじゃない。いくらだって何回も作れば上達すると思うよ?」
「・・・うん。頑張ってみる。」
「手伝ってあげるからさ。」
「、いつもより優しいね。」
「いつも優しいけど?」
「やだなー冗談ばっかり。」
「殴るよ?」
「嘘ですごめんなさい。」
に勇気付けられて、早速放課後ケーキ作りの練習をしました。
「お前にスポンジケーキは無理だ。」と断言されたので、ガトーショコラを作ることに。
ガトーショコラってスポンジケーキより簡単なんでしょうか。あたしよく分かりません。
に教わった通り作ってるはずなのに、焼いてるときに爆発したり混ぜてるときに気泡が発生したり湯煎したときに大量のお湯が混入したり。
「あんた・・・本当センスないわね!!」
「怒んないでよー。ていうかもソファーでテレビ見てないで手伝ってよ!!」
「私が手伝ったら意味ないでしょ?ほら、もう1回。」
「ちょっと休k「さっさとやれって言ってんでしょ。」
「・・・はい。」
完成するたびに大先生の元に持っていって、ダメ出しされること計5回。殴られること計10回。
しまいには「あんた真剣にやってんの!?」とマジギレされました。
あたしはいつでも大真面目に生きてるっつーの!!
5回目の失敗品を持っていったら、一口食べてから微笑まれ、あたしの口に豪快に押し込まれました。
・・・そして帰っていきました。
が帰ってからも、お母さんに猛反対されながらガトーショコラを作りつづけるあたし。
そして虎の刻。
ようやく自分なりに会心の出来のガトーショコラが完成しました。
「あたしだってやれば出来るじゃない。」
あたしはグルグルする頭を根性で抑えきることが出来ず、その場に力尽きた。
キッチンで倒れてるところを家一番の早起き、お父さんに発見され、その後お母さんに怒られ、何か超散々。
ふらふらしながらも急いでラッピングを済ませ、学校に行き授業中に睡眠学習をしていたら、あっという間に放課後。
ブン太のところに行こうと思ったのに、今度は担任に呼び出され説教されました。
何?今日は厄日?
挙句の果てに肩を揉まされたので、魂を込めて肩をぐりぐりやってたら開放されました。
先生が呻き声を漏らしたのをあたしは忘れません。
勝った・・・!!
6時30分。
立海大附属中学校硬式庭球部の部活終了時刻。
ウチの学校は、真田の一喝でファンの子たちの応援を禁止している。
いくら彼女だからって特例を認めてもらうのも気がひけるから、あたしは部活が終了したのを見計らって、部室の前で待つことにした。
「ありがとうございましたー!!」という声が響き、ガヤガヤとした雑音と、こっちに向かってくる足音が聞こえた。
「そんなんだからブン太先輩さんにフラれるんスよ。」
「フラれてねーよ!!」
「そうじゃ赤也。まだフラれとらんぞ。」
「止めたまえ仁王君、切原君。失恋の傷を抉ってはいけませんよ。」
「だから失恋なんてしてないって言ってんだろぃ!?」
「うるさいよブン太。フラれた時のショックが少ないように俺達があらかじめ心の準備をさせてあげてるんじゃないか。」
「何で俺がフラれる前提なんだよ!!」
「そろそろブン太に愛想を尽かす頃合だろう。」
「あ、さん。」
「え!?」
「とうとうフラれるんかのぅ。安心しんしゃいブン太。俺が慰めてやるきに。」
「ブン太、行って来いよ。」
「・・・おう。」
「。」
「ブン太。これ受け取って。」
「・・・え?これ・・・。」
「頑張って作ってみたの。ブン太が喜ぶかどうかは分かんないけど・・・。」
ギュ
「え、ちょ、ブン太!!」
「やっぱりは最高の彼女だぜ!!」
「ちょ、そんな大声で!!」
「いいじゃねーか!!なぁ、早速食っていいか?」
「うん・・・。」
嬉しそうにラッピングをほどくブン太。
自然に顔がほころぶあたし。
あたしは見飽きたガトーショコラが、幸せそうなブン太の口に運ばれていくのを見た。
「・・・どう?」
「・・・ごめん。」
「え?」
「お前が・・・お前がこんなに料理が下手だったなんて・・・!!」
ゴッ
「お前殺す!!あたしがこの手で殺す!!」
「ッッッ・・・!!ゴホッ・・・、ゴホッ!!ちょ、痛ぇよお前!!痛いとかそういうレベルじゃねーよ!!女子中学生がエルボーで咽喉仏狙うか普通!!」
「材料費と労力返せ。寧ろ死んで詫びろ。」
「ご、ごめん!!でも俺がお前を好きなのは変わんないから!!」
「黙れ。」
「、今度2人で俺お勧めのケーキ屋行こうぜ、な!?」
「誰がお前となんか行くかぁぁぁぁぁあああ!!!」
あたしが全力で作ったガトーショコラを全力で否定されあたしがキレないはずがありません。
ここで黙って去ったら女の名がすたるってもんですよ。
道理に従い、全力でエルボーをくりだしました(爽)
ブン太の呻き声を聞いても、この心は晴れません。
待ってろ、丸井ブン太!!
あたしはお前を叩きのめす・・!!
ごめんなさい。
煮るなり焼くなり本気で好きにしてやってください。
ねーどうしよう!!ギャグ甘じゃないよこれ!!全然甘くないよ!!
お待たせしました朱菊ちゃん。
2700踏んでくれてありがとう朱菊ちゃん。
多分忘れてるよね、うん・・・!!