〜招待状〜




誕生日を間近に控えた今日この頃、浮かれて過ごしている貴様の面が脳裏をよぎり、嘲笑を誘う。

花束やプレゼントに囲まれ、今年も優雅かつきらびやかな1日を過ごすだろうと、愚かな貴様は何の根拠もなしにそう考えていることだろう。

が、今ここに断定しよう。

貴様の誕生日は来ない。

唖然とするのも無理はない。

出来の悪い頭を持つ貴様なら尚更だろう。

信じられるはずがない?

まぁそれももっともなことだ。

しかし、貴様が信じようが信じまいがとにかく誕生日は来ないのだ。

全ての謎を暴きたくば、今宵テニス部の部室に来るが良い。

開始の合図は、獣のけたたましいうめき声。

惨事として名を残す、血塗られた歴史が幕を開けるのだ!!







Fericidades2








パタリと静かに紙を閉じ、跡部景吾はこめかみを抑えた。
鈍痛・・・というのだろうか、この頭の痛みは。


何の変哲もないいつもの朝だった。
学校に着き、下駄箱の扉を開けると1枚の紙が落ちてきたのだ。
ラブレターをもらう、なんて日常茶飯事ではあるが、どうもこの手紙はそんな可愛らしいものではない。
胡散臭げにそれを見つめ、軽い気持ちで手紙の封を開けてしまったのが何もかもいけなかった。


「・・・あのやろー。」

ボソリと呟き、殺意をはらんだ目で目的の人がいるであろう教室を一瞥し、跡部はそこに向かって真っ直ぐ歩き始めた。













その頃忍足侑士は、屋上でゴロンと横になりながら1通の手紙をジッと見つめていた。

「こんなことすんのあいつぐらいしかおらんやろ・・・。」

跡部と同じく、朝下駄箱から現れたそれは忍足の心をも掻き乱し、首謀者と思われる人物を色々と問いつめようとしたが、同じクラスのあいつはまだ現れない。
教室でジッと一通の手紙を見つめている理由から人から問われるのも煩わしかったし、天気も良いのでこうして屋上に来たのだった。













そしてまた同時刻、宍戸亮と向日岳人は走っていた。

「ヤベーよ、絶対遅刻だよ!!」

「俺昨日も遅刻したんだぜ?今日は流石に怒られるって!!」

「あー、遅くまでゲームやってたのが祟ったな・・・。」

「いいからペースあげようぜ!!」

「おう!!」

氷帝学園では、チャイムが鳴り終わる前に校門をくぐれば遅刻ではないと定められている。
最後の音が鳴り響いている間に凄い勢いで走ってきた2人に生徒指導の先生は驚いていたが、ギリギリセーフと言って笑った。


「あー、これ足にくるな・・・。」

「流石にあの距離ダッシュわな・・・。」

ハァハァと上がる息をおさえ、2人は自分の下駄箱を開けた。
手紙が落ちてきたが、朝のハードすぎる運動で心身共にクタクタだった2人は、深く考えず自分の鞄にそれを押し込み教室に歩き出した。

自分の席に着き、鞄から荷物を取り出そうとした2人は、先程押し込んだ手紙の存在に気付き封を開けた。
読み終えた2人の顔が酷いことになっていたのはいうまでもない。













そして、今誕生日を控えた4人の脳裏を一斉によぎっているであろうこの騒動の根源、はというと人通りの少ない第二学習室で後輩2人と最終調整をしていた。

「じゃあ先輩招待状は配ったんですね?」

「もうバッチリ。」

親指を立てて爽やかにウインクをしてみるも当然の如くスルーされる。

「後は頼んでおいた料理を取りにいけばいいんですね。」

「うわー、とうとう来ちゃったね!!楽しみだなぁ。」

「誕生日パーティを開くって決めた後の先輩の行動力は凄まじかったですね。」

「何ていうか、凄い楽しそうでした。」

「ありがとう。全て今日の嫌がらせのために頑張ってきたよ!!」

「・・・くどいようですが、どうなってもしりませんよ?」

「分かってるってー!!日吉ったら心配性だねー。」

心の底から今日が楽しみで仕方がないというオーラを惜しげもなくふりかざし、は笑う。
それを何か可哀想なものを見るような目で見つめつつ、チャイムが鳴ったので2年生2人は教室へと向かった。

「さてと。あたしも教室に行くかな。」

1人でこの学習室に残ってるのもあれだし、あたしもHRに出なきゃだし。
嬉しさのあまり足取りは自然に軽くなるって本当だね。
無意識のうちにスキップとかしちゃってる自分がいます。
まさかこんな羽目になるとは誰も考えないだろうなぁー・・・。

ヤッバイ、笑っちゃうね!!放課後が楽しみすぎて笑みが溢れるよ!!
あんな目にあうあいつらとか愉快すぎる。
そんなことを考えてウフウフしながら教室に入っていったら既に担任は来ていて、「どこに行ってたんだ?」と聞かれたので「学習室で勉学に勤しんでおりました。」って言ってみたら嘘をつくなと怒られました。超失礼。

席に着いて隣を見ると忍足がいない。
・・・おかしいな?いつもあたしが遅刻すれすれに来ると毒付いてくるのに。
今日学校来てないなんてことになったらどうしよう・・・!!
着々と進めてきた地獄の宴が中止になるかもしれないという超非常事態に思わず一瞬フリーズするあたし。
後ろの席の前橋君に忍足が来てたかどうか尋ねたら、朝早く来てすぐ教室を出ていったという嬉しい情報を聞けたので、一安心。
忍足のくせにあたしの計画を邪魔するなんてそんなの許されないですよね!!
いくら今日のあかさたな占いが8位とか微妙極まりない順位でもこんなことはあってはならない、うん。
危うくズーミンに殺意抱くとこでしたね!!

忍足のことだからどうせ屋上で昼寝でもしてるんだろう。
いつものことだし適度な時間に帰ってくるよね。
ていうかこんなに忍足のことを考えてる自分が気持ち悪くてしょうがないのでどうにかなるという方向でお願いします。













もう目当ての4人の誕生日は終わったのに、今更第2話更新でしかも短いという・・・ね。
この状況はどうやったら打破出来るんだろう。
が、頑張ります!!