只今あたしは夜道を1人とぼとぼ歩いております。
現在時刻は23時12分。
捕まります。お上に見付かったら補導されてしまうので細心の注意を払わねばな
りません。
かれこれ30分以上歩いたでしょうか。
あたしの目指す先はコンビニです。現代に溢れかえっている24時間営業のコン
ビニエンスストアです。
別にあたしの住んでるアパートの側にコンビニがないわけじゃありません。3分
くらい歩けばありますよ。
もちろん行きました。行ったけど売り切れだったんです・・・!!
何がって牛乳ですよ牛乳!!
いや、普通の牛乳なら売ってましたよ?
でも違うんです。あたしの求めてる牛乳はそのコンビニ限定の牛乳なんです・・
・!!そんじょそこらの牛乳とは格が違うんです・・・!!
ちょっと値がはるけどそこは妥協できないんです。
だってフルーチェを買ってきてしまったから・・・!!
その牛乳でフルーチェを作るとスペシャルな味がするんです。あたしはあの味の
虜なんです。
今日は朝から無性にフルーチェが食べたくて、帰りにスーパーに寄って買ってき
ました。
夜になり作り始めようとしたら肝心の牛乳がないことに気付き、買いに出たのが
随分昔のことに感じます。
今更あとには退けません。ここで諦めたらの名が廃るってもんですよ。
あと10分くらい歩けばあのコンビニに辿りつけるはず。
自分を鼓舞して頑張るのもそろそろ限界です。虚しいったらないよ。
「あ、ひy・・・何で逃げるの!?」
「・・・こんばんは。」
「もっとその感情を押し殺してよ!!」
「これが俺の精一杯です。ところで何でこんなとこに出没してるんですか。」
「出没って・・・。まぁいいや。牛乳探してたらこんなとこまで来ちゃったのよ
。」
まさか日吉に遭遇するとは思わなかった。
そういえば日吉の家ってこのへんだったよねー。
ていうかあからさまに嫌そうな態度を取るのはどうなんですか貴様。
武道をやってるんだから根本的な上下関係とかはしっかりしてると思うんだけど
、どうもあたしを敬う気持ちが足りないんだよね!
素敵上級生としては敬われた上で好意を抱いて欲しいじゃないですか。
「牛乳?何を言ってるんだこの人は。この人と話していると無駄に疲れるし、予
測してなかったのに遭遇すると疲労度も2倍増しだ。早く別れて家に帰りたいけ
ど仮にも先輩だから無視して帰るわけにはいかないし何で俺がこんな目に合わな
きゃいけないんだ面倒臭い。」
「よく分かりましたね。」
「もっと気持ちを隠せって言ってるでしょ!?」
「俺は何も言ってませんよ。勝手に俺の心を読んで不快になったのは先輩じ
ゃないですか。」
「日吉は全力であたしを敬うといいよ。ところで何買いに来たの?」
「兄に頼まれて雑誌を買いに来たんです。」
「え、日吉ってお兄さんいたの!?会いたい!!今から行っていい!?」
「調子に乗らないでください。じゃあ俺帰りますから。」
「え、あ、ちょっと日吉ー!!」
どうですか先輩を先輩と思ってないこの態度。
「夜道は危ないから送っていきますよ。」の一言がないってどうなんですか!?
夜の11時にアイドルマネージャーが1人だよ!?
むしゃくしゃしたのとお兄さんを見たいという気持ちが重なってこっそり日吉の
あとをつけていったら物凄い勢いで説教されました。
徐々に日吉に纏わる嫌な思い出が増えていきます。