「あ、宍戸ボタン取れてるよ。」


宍戸のユニフォームの第一ボタンが取れているのに気付いて声をかけた。
普通こういうのって自分で気付くもんじゃないんだろうか。
まぁ繊細の真逆を全力で突っ走るような宍戸に、そんなことを求めても無駄ですよね。
あたしは気付くよ!だって女の子だから!


「あ、本当だ。全然気付かなかったぜ。」

「そんなことだろうと思ったよ。縫ってあげようか?」


苦笑いしながら親切心を見せると怪訝な顔をされた。
何が言いたい。大体分かるのが悔しいけど何が言いたいんだ貴様・・・!!


「お前激不器用なんだから無理するんじゃねーよ。」

「不器用じゃないよ失礼な!!大丈夫。こう見えてあたし家庭科は3だから。」

「普通じゃねーか!!忍足なんか5だぜ?」

「いいじゃん!部員のユニフォームを繕うのがマネとなった今のあたしの細やかな願いなんだよ!」

「・・・まぁついてないよりは、ぐちゃぐちゃでもボタンがついてた方がマシだよな。頼むぜ!」

「一言多いのよ!!じゃあ今から部室で縫ってきちゃうからユニフォーム貸して。」


宍戸にそこらへんにあったTシャツを適当に手渡して、あたしは部室に戻った。
ちょっとわくわくしてきたよ!!
残念ながら着たままボタンをつけてあげるという行為には自信がないから出来ないけど、いつかやってみたいなー。
途中で跡部に「追剥か。」と言い掛かりをつけられたけど気にしないよ!
あたし今ヤバイ有能マネージャーじゃないですか?




















「出来たよ。はい宍戸!」


所要時間約3分。あたしは自分の才能が怖いですよ。
みんな縫い物はあたしに任せて!みたいな。

きちんと畳んで宍戸に渡すも反応が優れない。
・・・ボタンちゃんとつけたよね?


「何処の世界にユニフォームにカフスボタンつける奴がいるんだよ!!!」

「痛い!!だってそれしか見付からなかったんだもん。いいじゃんお洒落じゃん。時代の最先端をいってるよ!誰も追わないけど。」


何故か怒られた上に殴られたので抗議してみるもスルーされ、信じられねぇと呟きながら宍戸はすぐさまカフスボタンを千切り取った。


「あぁ!」

「何が『あぁ!』だこの馬鹿!!もうお前には絶対頼まないからな。」


・・・宍戸亮の心の狭さは満員電車の圧迫感並でした。