「いらっしゃいませ、ご注文は?」
その姿に、俺は小さな蝶が来たかと思った。
+てふてふ。+
先輩たちと遊郭に遊びに行った帰り、偶然ふと立ち寄った小さな茶店。
小さいくせにどこぞの大きい茶屋よりこざっぱりで、きれいで。
もしかしたら当たりじゃね?と思ったその時。
店の奥からばーさんとでて来た娘を見て、俺は小さな蝶が来たかと目を疑った。
藤色の店子用の着物。
ころころとした声、からからとした自然な表情。
化粧のような作り物のケばい匂いじゃなくて、作り物じゃない自然な和菓子の甘い香り。
今までいたところとは対照的なそれに目を奪われて、俺の中の時間が止まった。
「え、あ・・・お茶の冷たいのとよもぎ団子1皿。」
「わかりました、少々お待ちください。」
さっきの大通りは、遊女が多かったからカラコロという下駄の音がしたけど、
こっちは2人の女の草履の音しかしないから、ザッザッという音がする。
そんな音を聞きながら、早くさっきの蝶が来ないかと思った。
「お待たせしました。」
「どーも。」
意外と早く来た冷たそうな茶に、うまそうな団子。
素早く蝶に金を渡し、団子にかぶりついた。
「うまっ。」
「ありがとう。おいっしいでしょ?」
俺に茶を差し出して笑ったそのやさしい顔を見て、もっとその顔を見たいと思った。
もっと色々な表情の顔を見てみたいと思った。
目の前の蝶を知りたいと思った。
「ねえ、アンタ名前なんてゆーの?」
「名前?えっと・・・。。」
、ね。
いい名前してんじゃん。
「年は?」
「17歳。」
1つ上か。まあ、年は関係ねーし。
むしろ年の差上等?
「さん、さ。」
「はい?」
腕を掴んで、彼女を間近にひきよせる。
「俺がオトすから。」
驚いて赤くした顔。大きく見開いた目。
もっと俺に色々な表情、見せてよ。
「楽しみにしてて。」
名前しか知らない。
和菓子の香りがすることしか知らない。
声しか知らない。
笑顔しか知らない。
でも、今はそれだけで十分だ。
さあ、この蝶をどうやって捕まえようか。
+END+
☆2006年9月19日作成
遅くなりました、花芽様にささげます。相互夢で宍戸夢のお礼。
ぶっとんだ江戸パラレルですいません。
どうしようどうしよう!!
あんな宍戸夢でこんな素敵なものが頂けるなんて・・・!!
本当雛華さんの書く夢が好きです。
ありがとうございましたー!!!