赤く染まりだす空。
伸びていく私の影。
聞こえるのは、部活に励む生徒の声。
いつものベンチで
私は君の帰りを待っています。
優先順位
(まだ、来ない。)
テニス部部室のすぐ側にある木陰のできるいつもの白いベンチ。
そこで私の彼氏であるあいつの部活が終わるのを待つことが、
私の日課となってしまった今日この頃。
いつもなら、もうとっくに部室から出てきてもいいはずなのに。
今日はいつもよりあいつが来るのがやけに遅い。
ガチャ。
不意に部室から誰かが出てくる音がして、今まで自分の足元にあった目線を上げる。
「よっ!!!!!」
『…なんだ、ガックンか。』
「なっ!!クソクソ、失礼だぞ!!」
そのまま私の隣にジャンプしながら座るガックンを、横目で流して、視線をまた自分の足元に戻した。
そんな私に気づいたのか、ガックンが声をあげた。
「、跡部ならもうすぐ来るぜ。」
『あ〜…、うん。
てか、みんな今日やけに部室出てくるの遅くない?』
ふと、疑問に思ったことをぶつけてみる。
おっしーとかジロチャンとか、遅くまで自主練してる宍戸とかチョタならまだしも、
いつもそそくさと帰って行っちゃうヒヨでさえ、部室から出てこない。
明らかに、今日は何かが違う。
「べっ!別になんもねぇよ!!」
『…声裏返った。あやし〜。』
「〜っ!!なっ、なんでもねぇって!!」
『何でそんなに焦ってるのかなぁ〜?ますます怪しい。
教えて。
いや…教えなさい。
つか、教えろ。』
そんなこんなでガックンをいじって楽しんでいると、
背後にふと人の気配がして景吾かと思って振り返った。
「『……。』」
「景吾会長っていまどこにいらっしゃるか知ってる?」
私の期待は見事にはずれて、
そこにいたのは私の今最も嫌いな人物だった。
『景吾なら、多分もうすぐ部室から出てくるよ。』
私の大嫌いな、氷帝生徒会副会長。
「あらそう?じゃあ少し待たせていただくわね。」
そういって、私たちの前に少し離れて立つ副会長。
私たちのやりとりを見て、ガックンがコソっと私に耳打ちをしてきた。
「(なぁなぁ、あいつ…副会長ってさ、ぜってぇ跡部狙ってるよな。
この頃、何かと跡部にくっついてるし。)」
そう。
ガックンの言うとおり、副会長は景吾が好き。
この頃はなんだか行動が大胆になってきて、“生徒会副会長”という立場を利用して景吾にベッタリなのだ。
よくこうして、私が景吾のこと待ってるときに表れては、生徒会の仕事がなんだかんだで景吾を連れて行ってしまう。
そのために、ずっと景吾を待っていたのに一緒に帰れないときも多々あった。
正直、我慢強い私もさすがに腹の虫の居所が悪くなるのは当たり前。
「(なんか、あいついやらしいよなぁ〜。意地が悪いっていうの?
お前平気なわけ?)」
『(…平気に、見・え・ま・す?)』
「(…見えねぇ。)」
ガチャ。
また部室の扉が開く音がしてガックンと一緒に、そっちに顔を向けた。
丁度景吾と、おっしーがそこから出てくるところで
おつかれー!って言おうとしたら
「あっ!景吾会長っ!」
運悪く、副会長の声に遮られてしまった。
景吾は私の目と鼻の先にいるのに、届かない。
「景吾会長、ちょっと手伝っていただきたいことがあるんですぅ。」
これじゃ一緒に帰れそうもないな。
景吾はああ見えて、責任感の強くて優しい奴だから生徒会の私より仕事を優先してしまう。
待っていた側としてはなんとも言えないけど、
そんな彼を好きになってしまったんだから仕方あるまい。
『ガックン、おっしー。帰ろうか?』
景吾に背を向けて、ベンチの上に置いてある自分の鞄に手を伸ばそうとしたとき、誰かに手首を掴まれた。
『景吾?』
振り返ると、そこには景吾が立っていた。
『何してるの?』
「アーン?一緒に帰るんだろうが。」
『いや、仕事は?』
「お前のことのほうが優先だろ。
今日は特にな。」
『へ?何で?』
頭上にハテナマークいっぱいの私。
『今日ってなんかあったっけ?』
私のその言葉に、景吾は軽くため息をつき、おっしーは噴出し、ガックンは目を見開く。
(えっ、本当になに!?)
「、自分、自分の誕生日も覚えてないん?」
『あ……。』
おっしーの言葉で、今日が自分の誕生日だったと今気づいた。
「…ったく、お前は。
ほら、俺様の家で祝ってやるから来い。」
そう言って、私の手首にあった手を、手のひらに移動させて私を引っ張る景吾。
そんな時、
「景吾会長!仕事よりその彼女なんですかぁ!?」
みんなからシカトされていたのに耐えられなかったのか、いい雰囲気をぶち壊しにする奴がいた。
「アーン?なんだお前。まだいたのか。」
「景吾会長〜、酷いですぅ〜。」
うわ、なんだこのブリブリ女。
というか、仕事>私みたいなこと言ってたよね。
なんか、侮辱された気分…。
ちょっと、気に食わないかも。
「それやめろ。」
「えっ?」
景吾が普段より低い声を出したのに気が付いて、はっとして景吾を見た。
景吾、怒ってるの……?
「俺を名前で呼ぶな。
それに、気安く話し掛けるんじゃねぇ。
だいたい、生徒会の仕事もまともにできないんなら、副会長なんてやめろ。」
「そっ、そんな…!!」
「うぜぇ。
俺を名前で呼んでいいのはこのだけだ。
それになぁ、いくら女でもこいつのこと侮辱しやがったら、ただじゃおかねぇぜ。
退学させられたいのか?アーン?」
そう言って、私を引き寄せる景吾。
「…っ!!すっ、すみません!!」
ギロリと景吾に睨まれて、耐えられなくなったのか副会長は走ってどこかに行ってしまった。
「いくぜ、。」
そう言って、私の手を引いて歩きだす景吾。
『…相変わらず俺様。』
「アーン?なんか文句あんのか?」
『…ううん。
………ありがと。』
「フンッ。」
優しい顔して、鼻で笑う景吾。
つないだ手に軽く力を入れれば、
優しく握り返してくれる。
貴方の中での優先順位は、
いつも私が一番だったんだね。
「。」
『ん?何?』
「Happy Birthday」
本当に、ありがとう。
***OMAKE***
『ねぇ、今日なんであんなに部室出てくるの遅かったの?』
「お前のプレゼント何にしようかって、みんなで考えてたんだよ。」
『えっ、みんなで?』
「あぁ。
宍戸は花束
鳳はアクササリー
樺地はネックレス
日吉は濡れせんべい
ジローは羊
岳人は納豆一年分
忍足は下着
だとよ。」
『うわ〜見事にばらばら。
(宍戸って案外キザだ。
てか、岳人とか日吉とかジロチャンは自分の欲しいもんでしょ!
樺地…喋ったのんだね…。
おっしー、後で殺す。)
で、何にしてくれたの?』
「アーン?
全部買うにきまってんだろうが。」
『……。
君はそういう人だったね。
てか、まず本人に何が欲しいか聞こうね。』
fin.
後書き。
これは、花芽の誕生日にプレゼントとして捧げさせていただきます!
てか、二日も遅れしまいました…。
花芽、本ッッッ当にごめんね!!
許してプリーズ!
そして似非跡でごめん…!
跡部って、良くわかんない…泣
こんなんで本当にごめんね。
楽しんで頂けたらさいわいです。
あっ、言うの忘れてた!
17歳おめでとう!!
これからも、バカでアホできちがいな私を宜しくお願いいたします!
花芽、大好きだあああぁぁぁぁ!!
2007.7.25 碧空 天馬
天馬から誕生日夢貰いました!!
跡部リクしたらこんな素敵夢書いてくれたよきゃっほい。
やっぱさー、跡部にはこういうのが似合うよね♪
イラストといい夢といいあたしに尽くしてくれてありがとう(何かが違う)
こちらこそこれからも宜しくお願いします。